セーケのほぼ毎日コラム

ダウンフォース。

 クルマの空力を語る際によく使われる言葉なのだが、アイドラーズマガジンでもポルシェマガジンでも幾度となく空力の特集を組んでいる。特にCAを使って空気の流れを可視化したのは、クルマ雑誌史上初めてであったと密かにほくそ笑んでいる。

 その最初の特集時に空力を捉えているというライターに依頼したのだが、どこかおかしい。で、何度か打ち合わせを重ねて分かった。彼はダウンフォースを『押さえる力』だと思っていたのだ。まあ、直訳すればそうなるのだろうが、それは空気の流れを作るまでもないただの抵抗だ。抵抗装置をクルマに付けてダウンフォースだと思っている人はかなり多いのかもしれない。

 このコーナーはコラムなので難しいことは端折ってしまうが、ダウンフォースとは引っ張る力のこと。押さえる力とは真逆なわけだ。

 空気の流れで物が引っ張られるのは日常的によく見ているはずだ。例えば、ビニール袋がダンプカーに吸い寄せられるような様がそれだ。

 これを意図的に作り出すのがウイングであったりカナードであったり、フラットボトムであったりする。空気の流れは狭いところを通る時に速度が上がる。速い流速は物を引きつける。これを利用したのがリアウイングだ。リアウイング下面と上面の速度差を発生させてウイングを下に引っ張る。それでリアを安定させる。

 さらに、その引っ張る力となった空気の流れをテールエンドで上に向かせてボディ下面を流れる速い流速をさらに引っ張り出す。その方向を付けるのがカナードだ。カナードを付ければダウンフォースが得られるわけではない。

 なお、時速140キロ走行時にリアウイングがない場合、ルーフ全体の揚力が上空20mにも及ぶ。ウイングがあると、揚力はあるものの数メートルにとどまり、後部へと位置を変える。

 本稿はここまで、空力はおもしろい。

 

追伸)

 米国で超音速時代のジェット戦闘機を設計した際、ホディサイドをまっすくにして空気抵抗削減を狙ったボディでは飛行が安定しなかった。そこでボディ中程をくびれさせていくとピタッと安定した。空気の流れで空気を安定させるとでも言うのだろうか。

 想像の翼が広がっていく。