セーケのほぼ毎日コラム

12時間耐久のアイドラーズ

 1年をかけた12時間耐久が終わった。

 昨年の12月以来動かしていなかったアイドラーズの964アラタメ。12耐に賭けての登場だった。去年の覇者SEV。惜しくも2位に甘んじたCONCEPT、アジアンルマンの覇者でルマン24h6位のCAR GUY、トップを快走中にトラブルに見舞われリタイヤとなったGulf、軽さを活かした12hp、自力の強さを発揮するTK、静かに入賞する中部アイドラーズ、ポルシェ718で食い込んでくるTaimaz、優勝経験をもつタツ。これらをわずかな差で追い上げる常連組やクラス優勝を狙う強豪たち。これらの強豪に囲まれて半年ぶりにサーキットに登場したアラタメは、万全の布陣を敷いた。

 チームリーダー:清家。作戦班:清水(監督)、青木、根來。メカチーム:栗山、直里、大沼、金子、渡辺、高橋。ドライバー:壷林、峰尾、山口。ドライ時の給油予定24回。ラップタイムはカーガイ・ウラカンGT3の2’06には及ばないものの2番手の速さをみせていた。
 ウェット路面でのスタートから1時間。コースがドライに変わったころ。ドライバーから緊急無線。なんとシートステーが割れてブレーキを踏むことができない。ここまではチェックしなかった。が、考えてみればミッションケースが破損するほどぶつけられていたのだから、シートに大きな負荷がかかっているのは当然だった。後から考えて分かることは、ちゃんと考えれば事前に分かるはずだ。今日のタラレバが生まれた。

 ピットにアラタメが戻ってきたのだが交換部品がない。すると、アラタメの異常を隣のピットスパンで感じたRWB中井君が飛んできた。破損個所を確認すると、すぐに自分のチームへ。チームメイトの車両からシートレールごと持ってきた。そこから一気に交換。しかし、すでに20分以上を失ってしまい、コースに復帰した時は58位まで落ちていた。 こうなると、ドライバーに負荷がかかってしまうのだが作戦変更。燃費と勘案しながらペースを少し上げることにした。が、ひとりのドライブ時間は長くない。3名しかいないため充分な休憩を取ることができない。しかもクールスーツもおかしくなり、エア抜きがちゃんとできていなかったためか、横Gがかかった時にしか水が回らない厳しい状態になっていた。しかし、そこはアラタメに通じているドライバーたち。安心して任せることができる。

 スタートから3時間。コース復帰から1時間で29位へ。4時間経過時点で26位。5時間経過時点で14位となり、ピットモニターの上位固定画面に復活した。しかし、ここからはなかなか上がれない。順位を上げ、給油で落とす膠着状態に陥ってしまった。そこで、順位をキープしたまま最後のスティント前の給油を回避してアタックしやすくするために小刻みにピットイン・給油を行い、燃料を少しづつ貯めることとした。これが6時間から9時間経過時点で10位を続けてきた理由だ。
しかし、最もステディさを必要とするこの時間帯で歓迎したくない状態も続いた。まずABSがパンク。おそらくセンサーに何かが付着したと思われる。しかし、パニックブレーキさえ踏まなければブレーキ感は通常状態。よって放置することにした。次いで無線異常。この断線をピッチアウト前に急遽対応せざるをえない。こうしたロスの積み重ねがドライバーへの負担となってしまう。

 いいこともあった。スタート後1時間の雨とその後のステディな走りがタイヤの消耗を抑えることにつながり、ダンロップ03G R2というSタイヤの交換をしなくてもグリップをキープしていた。

 9時間を過ぎたところからペースアップ。10時間経過時に9位。チェッカーまであと1時間となる11時間経過時に7位。しかし、ライバルたちもプッシュを始めた。トップのCONCEPTは244周。つづいてGulfが241周、SEVが239周、CAR GUY、タツ237周、アドホックが234周、アラタメは233周だ。CAR GUYは本来はトップに躍り出ているはずだったのだが2度のペナルティで10周減算。我々もペナルティだけは避けることを再確認した。

 しかし、状況はトップ3にも届かないことが分かった。そこで、追い上げてきたスティーレMITO、PAZZOプジョーを引き離し、目前のアドホックをパスすることをターゲットとせざるを得なかった。そして結果はトップから11周遅れた6位。タラレバだが、あの20分強がなければ、タイヤも20分強なら保っている状態だったし、263周で262周のSEVをかわして2位だった。と、悪あがき。

 タラレバは大切だ。タラレバをちゃんと捉えているから二度と同じミスをしない。悪あがきは希望を生み、打ち上げの笑いを作ってくれる。

 アラタメが追い上げを開始した9時間経過時点。午後5時ごろ。もてぎの空に夕陽がかかり、少し風が優しくなってくると、日暮れが早くなる。すると沈む太陽に反比例するように寂しさが湧き上がってくる。まだ走っていたいよう、やめたくないよう、やめたくないようと心がつぶやくのだ。

 すっかり陽が落ち、夜が支配するツインリンクもてぎ。いくつものヘッドライトが重なり通り過ぎていく。なんて綺麗なんだろう。

 午後7時45分。チェッカーポストへ向かう。途中で喫煙所によって一服だけ。チェッカーポストに登ると3名のオフィシャルが笑顔で迎えてくれる。振り返れば、最初のころは笑顔はなかったなあ。この日のオフィシャルのひとりは昨年ドライバーとして参戦していたという。変わったなあ。ありがたいなあと思う。

 チェッカーポストのモニターのトップのCONCEPTが映し出され、各ポイントごとに追いかける。管制塔からの無線が絶え間なく入り始める。「先頭車両ゼッケン136番、ただいまダウンヒル。ただいま90度。ただいまヴィクトリー」これを合図にチェッカーを振る状態へ。来た。「一斉連絡。先頭車両ゼッケン136番にただいまチェッカー」そこからチェッカーを振り続け「最終車両ゼッケン08番にただいまチェッカー」。そして、ピットレーン側の窓を開ける。手押しチェッカーを1台のミニが待ってる。ゼッケン89番へチェッカー。

 アイドラーズのピットへ戻るためにピットレーンを歩く。すべてのチームメンバーが愛車を出迎えている。ライバルたちにも拍手を送っている。走りきってノーサイド。

 アラタメに早く会いに行こう。ボディをポンポンしてやるんだ。